「暑いですねー」
駅のホームであっても、確かに暑かった。
電車から降りて、駅の外に出るまでにメールを一本、打っておきたかった。それで、ホームのイスに座り、メールを打っていた。メールを打ち終わろうかという少し前に、おばちゃんが横に荷物を置いて、ペットボトルを取り出し口にする。飲み終わった後の彼女の表情を見て、フッと言葉が出た。
「暑いですねー、駅の中であっても」
「えぇ、ホントに」
たったそれだけの会話。
だけど、その言葉を発する彼女は、心のそこからその言葉が出ていたかの様な、とてもキモチが篭っていて、聞いているこちらとしては気持ちよかった。
暑い最中だ。
表現したことも、どちらかというとキモチが参っているかの様なことじゃないか。ともすれば、「えぇ、ホントに」という表現と共に、嫌な気持ちが引き出されても充分に理解が出来る。
そして、別段そういうことをしたかった訳でもない。
かくして実際に発せられたキモチというのは、どちらかというと共感を呼ぶ様な趣きだったんだね。暑いから参っている状態ではあるけれども、その状態が共有され共感できる存在同士が、一瞬にして育み合った関係。
だからなのか。
とても気持ちよかった。
暑くても、あの表現によって元気が漲る。
次の目的地に向かい歩く姿が、安定感あって力強かった様に想う。
駅のホームであっても・・・
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