今日、東京は激しい雨に見舞われていた。
傘をさしていると、そこまで体がぬれる事はない。だけど、足元に差し込む雨は、風を受けて斜めの角度で入り込んでくるし、地面に跳ねつけられた雨もまた、足元に入り込む。
程なくして、足元はびしょ濡れ。
長く歩いている人は、皆そうなんだろうと思う。
品川駅から渋谷駅に向かう電車の途中、電車が来るのを待っている間に、やはり電車を待つために隣に並んでいるおばさんがいた。僕は話しかける。
「今日のこの雨は台風か何かが来ているんですか?随分と激しいですけど」
「え、そうなんですか。私、こっちの人間じゃないので分かりませんけど」
「そうですか。随分と激しい雨ですけど、今日は天気予報を見てないもんですから」
「えぇ。えぇ。」
と会話。
電車に乗って、渋谷方面へ行く。
隣にいた人が、折りたたみ式のケータイの画面を指で押さえたり、スクロールしていた。スマートフォンの様に。
「え?すいません。それはスマートフォンか何かなんですか?」
「えぇ、折りたたみ式のスマートフォンなんです。」
「へぇ、そういうのがあったんですか。折りたたみ式のやつでスマートフォンが出てるんですねー。それはいつ頃に出たやつなんですか?」
「これはもう随分と旧いですよ」
ちょっとハスキーがかった声をされている男性の方。
僕は、知らなかったけど、折りたたみ式のスマートフォンってある様子。スマートフォンにしようかどうかを検討中の僕だったから尋ねたくなったのか。
渋谷駅。
マークシティへと渡る横断歩道。今は赤。ふと隣に、何となく開けている印象をもつ兄さんが。
「今日って台風か何か来てるんですか?随分と雨が激しいですよね?」
「来てないみたいですよ。明日は晴れるそうです。」
「え?ここまで激しいのに?」
「えぇ。晴れるそうですよ。」
「おぉ、それは良かったです。それにしても今日は、足元がかなり・・・」
「えぇ、ビショビショですわ。」
ビショビショですわ、という彼はとても明るいというか発散された印象だった。何というか、人生を楽しんでいるかの様な雰囲気があったね。
横断歩道を渡る僕の足は、軽快になっていた。
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